和風シンデレラ 〜煙管を掲げて〜
そうした意味もふまえて
来た客にされるがままにされる女郎がほとんどだが



あたしはちがう。

月華屋、滝檎一の花魁としてプライドっつうモンがある。


"軽い女"だなんて思われたくない。




あたしを指名するには

まわりの女郎の2倍以上の金が必要になってくる。

その金を準備してきた客(旦那様)だけあたしを指名できる。


その旦那様は2階の高級感溢れた部屋に案内され
しばらくの間 新造(しんぞう)という相手役に相手をさせる。


わざと時間を遅らせる。


遅らせ、遅らせ、待たせ。

来ない と待ちくたびれた旦那様が帰ろうと立ち上がった瞬間に部屋に入る。


そうすれば、客の喜びも一層大きくなり

"簡単には来ない女"と型付けすることもできる。



呼ばれたから行く てだけじゃない。

太夫だから。
作戦も必要である。



そうして部屋に入ったあとは

あたしは一言も話さない。


ただ旦那様の隣に座り
お酌をしたり、言われたことに微笑んだりするだけだ。

舞や三味線を披露する女を
旦那様と鑑賞するだけ。




それがあたしの商売。







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