そしてキスからはじまった
再会してから一か月後、私は紫音と病院のプレイルームで結婚式を挙げた。

疲れやすくなった私は車椅子にすわり、白いウエディングドレスを着て

横には白いタキシードを着た紫音が並ぶ。

急なことなので出てもらえないことも覚悟で出てほしい人だけ出席をお願いした。

忙しいのにボスも出席してくれた。

「ボス・・今日は急なことなのに出席してくれてありがとうございます。こ、孝は?」

「アメリカに行ってから連絡を取れないことが多くて今回も連絡がつかなかったんだよ。すまない」

「いいえ」

もし来てくれたら最後に謝りたかった。傷つけてしまったこと。

そして三月の終わりの早朝、私は産気づいた。来月には帝王切開で産む予定だったのに早く生まれたかったんだね

麻酔が効いて眠る前に私は紫音の手を握って「紫音、愛してるあなただけを・・生まれ変わっても」

きっとこれが最後だと思うと、紫音を縛ってはいけない、幸せになってほしいを思ってるのに・・

生まれ変わるまで待っててほしいなんて身勝手なことを考える。

薄れていく意識の中で遠くに赤ちゃんの泣き声と

「女の子だよ、君に似たかわいい子だよ」という声が聞こえた。

良かった。無事に生まれて。

そして私は目を閉じた。

真っ暗中すごい力で引っ張られた。

目を開けると眩しい光と何人かの人が笑顔で私を見ている。

ここはどこ?

眠い・・とっても・・私はまた眠りについた。

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