そしてキスからはじまった
紫音side

ジュリアは子供を産んですぐ眠るように亡くなった。

来月に入ってすぐに体の負担を考えて帝王切開で出産する予定だったのに・・

彼女は出産によって死ぬことが分かってたかのように自分の与えられる臓器、角膜、髪の毛まで

この病院に入院する子供に優先的に提供する約束を医者にしていた。

俺は彼女の亡き骸を抱きしめることも出来ず手術室の前の椅子に座っていた。

うなだれる俺の横に誰かが座った。ばあちゃん?

横に座るなり「紫音、生まれ変わりを繰り返す猫の話を覚えれてる?」と俺に言った。

生まれ変わり?猫?あ~あの本?小さい子供がいないばあちゃんの家の机の上に置いてあったその絵本を

興味本位で読んだ・・なぜか涙が止まらなかった。不思議な物語・・

「あれは本当の話、セイ、おじいちゃんの猫の話。
最初の彼は彼女が死んだあと後を追うように病気でなくなった。
セイの猫だった時も・・神様は紫音の生きる希望に子供を残したのかもしれないね。」

「生きる希望?」
「そう」
「ジュリアは生まれ変わると俺に言ったんだ」
「うん」
「俺はいつまで待てばいいんだ」
「うん」
「やっと再会出来たのに」
「きっとお前には彼女が分かるよ」
「どうやって?」
「お前だけが分かる目印があるのかもしれないね。
白い綺麗な猫だった。そういえばお腹にピンクのあざのようなのがあったね」

赤い髪、赤い目を持つばあちゃんが言うと本当のことのように思える・・

俺達が猫の生まれ変わりということに・・

彼女、ジュリアに会うために俺は何度生まれ変わらなければいけないの?

俺はただ涙を流した。


ジュリア編  fin





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