瀬々悠の裏事情
異能者と一般人の間で諍いが起きた場合において、一般人を擁護することが千秋達、一般対策部の役割である。
その中には理不尽な要望に応えることや、辛辣な言葉を浴びせられることも当然ながら含まれているだろう。
いくら仕事とはいえ、そう易々と割り切れるものではない。
「でも大変さで言ったら、異能犯罪対策部やチーム調停部の方が上ですよ。犯罪対策部は場合によっては死と隣り合わせですし、調停部は定期的にチーム視察と偏屈な所属者のやっかみに耐えなきゃいけないので、神経すり減らしてますし」
「偏屈って、ジョエルさんみたいな?」
あくまで例えとして、思い浮かんだ人物の名を口にすれば、千秋は大きく頷いた。
「いい例です。彼のお陰で調停部を去った人がどれだけいるか。あの南雲さんでも苦労してましたよ。まぁ姫がリーデルになって、担当が司郎くんになったので、もう大丈夫だとは思いますがね」
担当。その言葉に瀬々はある事を思い出す。
「司郎って、確か佐倉とかいう人ッスよね?」
「そうですよ。新しいオルディネの担当。さっすが情報屋。よく知ってますね」
「名前と役職だけッスよ。どんな人なんスか?」
「史上最年少で調停部副部長になった超優秀くんですよ。俺より若いのに仕事が出来て、冷静沈着で真面目かと思いきやノリもいい。気遣いも出来るハイスペック。そしてモテる。悔しいほどモテる」
「それ二回も言うことッスか」
私情が入り混じった詳細にやや呆れつつ、二人の足取りはチーム調停部へと辿り着いた。
二人に気付いた南雲は、自分のデスクから離れて笑顔で迎える。
「良かった。ちゃんと来たね」
「そりゃあ言い逃げされたら、気にせずにはいられないッスよ」
軽く手を挙げて瀬々が答えれば、南雲は受け流すようにやんわりと微笑む。
「そんな風に言ったっけな。まぁ用があったのは確かだが」
「依頼ッスか?」
「いや、渡したいものがあってな。持ってくるから、そこで少し待ってくれ」
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