瀬々悠の裏事情


そう言い残して、南雲は部署の奥へと消える。
彼を待つため瀬々は近くにあった椅子に腰掛けようとする。


「あ」

「どうしやした?」

「あれだよ」


千秋が指差した先。
そこには調停部へと向かったあかねの後ろ姿と、彼女と何やら話をしている見知らぬ男の姿があった。


「あれが司郎くん。あそこで姫と話してるのが」

「へぇ……あれが」


瀬々はうっすらと笑みを浮かべて、目を細める。
短い焦げ茶髪に、一見地味で華やかさこそないものの、よく見れば端正な顔立ちをしている。
また千秋と同じくスーツを着ているが、着崩すこともなくネクタイもきっちり締めている。

ーーなんという真面目。
ーー地味だけど顔は悪くないし、
ーースーツの割増入れなくても
ーー普通に女子にモテるわあれ。

瀬々は先程の千秋の言葉を振り返りながら、内心で同意する。


「お待たせ。ん?どうした?」


大きめの紙袋を手に戻ってきた南雲が声を掛けるが、瀬々の様子が気になり視線を辿りながら振り返る。


「…桜空さんに用があるなら、呼んでこようか」

「あー大丈夫ですよ。司郎くんのこと話してただけですから」


あかねを呼ぼうとする南雲に、千秋が口を挟んで制止する。


「なんだ佐倉の方か。見てても楽しくないだろ」

「でも相変わらず仕事熱心じゃないですか。俺も頑張らないとなぁ」

「だな。でもあれはいつも以上だ。担当決めの時も、やたらとやる気だったから指名したんだが、どうやらアイツにとって桜空さんは特別らしい」


千秋と南雲の会話に聞き耳を立てながら、再び佐倉を見る。
遠くからではその様子を伺い知ることは難しいが、調停部ひ赴くあかねの態度から察するに、親しい間柄ではあるのだろう。


「確かに。姫とやたら仲良いですよね」

「佐倉は知り合いとしか言わなかったが、桜空さん曰く互いの秘密を知る仲だとか言ってたな」


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