瀬々悠の裏事情
「きゃー!つまりただならぬ仲ってわけですか。いやーん!姫ったら大胆!」
恋愛話で盛り上がる女子のように、興奮して騒ぐ千秋。
南雲は軽く呆れながら溜息を零して、瀬々へ向き直る。
「そういえば瀬々は、佐倉のこと知らなかったよな。紹介しとくか?」
「是非!あ、でも今度お願いしても?友達の邪魔はしたくないんで」
「分かった。じゃあこれ」
南雲は持っていた紙袋を差し出す。
「この前、娘と旅行にな。大した物じゃないが、藍猫のみんなで食べてくれ」
「ありがとうございやす」
瀬々はお礼を述べて、土産の入った紙袋を受け取る。
思っていたたよりも量があり、重みに耐えるため持ち直す。
「どこに行ってきたんスか?」
「大阪だよ。ユノが…娘がどうしても行きたいって聞かなくてな」
「いいじゃないッスか。娘さんと仲良くて。旅行とか羨ましいッス」
「瀬々も相澤と行ってきたらどうだ?」
「いやぁ…それはちょっと。柄じゃないッスよ」
普段から世話になっている智昭なら、今更変に気遣うことはないが、同時に何とも言えない気恥ずかしさがある。
「そうか?相澤は喜ぶと思うけどな」
「まさかぁ」
「だったら社員旅行みたいな感じで行ったらどうですかー?」
一人騒いでいたはずの千秋がそう答えれば、南雲は頷きながら笑みを零す。
「いいんじゃないか。うちの部でもやってみようか」
「ホントですか?ならウチのとこも混ぜて下さいよ」
「玲ちゃんが許可してくれたらな」
「うげ。それなんて無理ゲー。瀬々くん何か打開策ありません?」
「んー……企画立てて、南雲さんの話術で突き通す?」
「それだ!」
「おいおい、無茶言うな」
「だってー」
あくまで食い下がる千秋を軽くいなすように宥める南雲。
その様子は軽口を叩きながらじゃれ合う兄と弟のように見えて、瀬々は少しだけ笑みを作る。
部署は違えど、同じ局に勤め親交のある二人。
自分と智昭も、周囲から見れば似たようなものだろうかと思いつつも、その考えを振り払うかのように目を逸らす。
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