瀬々悠の裏事情


「あははぁ」


明確な指摘に、もはや乾いた笑いしか出てこない。
舞い込んでくる依頼の数と社員の数の比率がおかしいのだ。
加えて休みもろくに取れないことが度々ある。もはや反論の余地もないのである。


「だから先輩を呼び戻したいんですよ。今より風通しが良くなりますし」

「買い被り過ぎさ。私があそこまで出来たのは、誠一郎と雪子がいたからで――おや?」


ふと、アーネストの視線が遠くを捉えた。

「ああ……未夜ちゃんとクロードちゃんですよ」


智昭が視線を追うと、そこには口下手な同僚と控えめな後輩の姿があった。
クロードは相変わらず眉間に皺を寄せて、未夜に向かって何か話している様子だった。
一方で彼女の方は口を噤んだまま俯いており、表情までは分からなかった。


「聞かない名だね。新入りかい?」

「違いますよ。まぁ未夜ちゃんは瀬々ちゃんの同僚ですけど。クロードちゃんはその……四代目・夜見です」


間を開けて告げると、途端にアーネストの顔色が変わった。
そして今も未夜に話し続けているクロードを逃さないと言わんばかりに鋭い目つきで捉える。


「なるほど。彼が……彼が誠一郎の…」

「あー……紹介した方がいいですか?」

「するべき」


断言して、アーネストは颯爽に席を立って、クロードの方へと歩き出す。


「ですよね……はぁ」


智昭はその様子を見ながら一人ごちると、溜め息を零して重い腰を上げた。


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