オレンジ
そっか。
こいつは、えーりのことを美人だとか言ってたんだっけ。
「言っとくけど、えーりには好きなやついっから」
「なに、今さら」
あっさりと返された。
友達のことだから、誰だよーとか言って追求してくると思ってたのに。
「知ってんの?」
「見てりゃわかるべー」
見てればわかるのか。
それくらい俺の観察力はたりなかったのか。
「やっぱしょーへはわからんのか」
「…興味ない」
友達をおいて、俺はスタスタと先に進んだ。
俺は強がって、『興味ない』とか言ったけど…。
そんなのは、うそ。
俺すら知らなかったことをこいつは知っていた。
俺はえーりの親友なのに。
たったそれだけを知らなかった、そんなことが嫌だったんだ。