キミの風を感じて
「ウソばっかし」
ボソッと言うと、高梨くんはハハハッて笑う。
「ウソじゃないって」
「そりゃ前よりはね、速くなったと自分でも思ってるんだよ。でもそれでもやっぱ足手まといなんだ。みんなすごーく速いんだから」
「運動部のやつらだろ? あいつらは毎日鍛えてんだし、速くて当たり前なの」
いつのまにか金網のフェンスはもうおしまいになり、通学路は学校から離れて、のどかな住宅街を駅へと続いていく。
「速いだけじゃなくて……強い、よね」
ポツンと、そんな言葉が出た。
「ん?」と高梨くん。
「スポーツやってる人って、ここ一番って場面をきっと何度も経験してるんだよ。打ち勝ったり負けちゃったり、成功も失敗もきっと何度も……。
わたしはそーゆー経験値ゼロだからさ、体育祭のリレーだけでこんなにいっぱいいっぱいになっちゃうんだ」
情けないな。