闇夜に真紅の薔薇の咲く
どこからともなく羽ばたく音がして、カラスがなく。





思わず上空を見上げると、視界がぐるりと回った。





「え……」





驚きで声を発したのもつかの間、ぐるぐると視界は回り続け、軽く吐き気を覚えてその場にうずくり、瞳を閉じる。





けれど視界は回り続け、手のひらで顔を覆う。





と、上空から声が降ってきた。





それは、本来なら“現実”で聞くはずの無い声で……。








『我らが姫。何故、今朝はお逃げになられたのか』

『迎えに参りました。さぁ、我らと共にあなたの故郷へ』

『我らと共に、闇の国へ――……』








驚きと恐怖で、思わず空を振り仰ぐ。





視界が激しくまわりだすのは未だ治っていないが、不思議と吐き気はおそって来ない。




恐らく、吐き気よりも恐怖の方が勝っているからだろう。





何故、と朔夜は目を見開く。





聞こえた声は忘れるはずのない、あの悪夢で聞いたもの。






ねっとりと纏わりつく声音と、どこか闇を秘めた独特の高い声音。






全身に鳥肌が立つのを感じた。






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