闇夜に真紅の薔薇の咲く
Xx.+.




「……思わずって感じ?」





渋い表情をするノアールと、彼の腕の中で眠る朔夜を交互に見ながらルイは面白そうにつぶやく。






ノアールは髪を乱暴にかきあげると、ため息をついた。






「うるさい」

「それにしても珍しいね。ノアールが人を殺すことを躊躇うなんて……」






すいっとルイは目を細めると、こちらに歩みを進め血の気の失った朔夜の頬に触れる。





思わず身を引いて彼女を護るようにルイに背を向けると、彼はくすくすとほほ笑んだ。






「大丈夫。オレは彼女を殺さないよ。君が殺さないなら殺す意味なんてないでしょ?」

「……」

「でもね、ノアール。彼女はいずれ王宮に牙をむく存在になる。それは君だって分かってるだろう?」






背を向けているため、ノアールにはルイがどんな表情をしているかも分からない。





ただ分かることと言えば、彼の言っていることが正論と言うことだけ……。






「ノアール。闇の姫が覚醒する前に、気持ちの整理をつけておきなよ。お前は彼女を、必ず仕留めなきゃいけないんだから……」






ルイの言葉が終わるや否や、ノアールはすっと片手をあげる。





それと同時に腕の中にあった温もりは消え、淡い青の瞳が寂しげにゆれた。




彼はそれに気付いているのかいないのか、ゆっくりと静かに目を伏せた。








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