闇夜に真紅の薔薇の咲く
Xx.+.




のどかな鳥の鳴き声が聞こえる。





白いレースカーテンから柔らかな陽光が入りこみ、朔夜はみじろぎをして布団をかぶりなおし……飛び起きた。






思わずあたりを見回し、それがいつも通りの自分の部屋だと気づいて気の抜けた声を漏らす。






「私の……部屋……?」






いつも通りの、茶色と白で統一された甘すぎずシンプルすぎないその部屋に、安堵の息を漏らすと同時にとある疑問がわく。






いつの間に自分の家に戻ったのだろう。






昨日の体験は思いだそうとすれば鮮明に彼女の脳裏によみがえる。





闇に消えた彼らに、武器を構えたノアールとルイと言う名の男性。





短時間でおこった非現実的なそれらは、やはり彼女の夢だったのだろうか。





ベッドから出てかけてあった制服を手に取り、とりあえずどこか昨夜の出来事の痕跡がない物かと調べているが何もなく、朔夜は僅かに瞼を伏せた。





夢であったなら、それが一番いい。




そもそも、あんな悪夢のような――……本の中でしか起こることのない出来事が、現実に起こり得るはずがないのだ。






ただ、夢と現実が混濁してしまっただけ。





彼女はそう結論付けると、制服に袖を通していつも通り階段を下りる。





ダイニングの扉を開けるとそこにはいつも通り母がキッチンで料理していて、娘の姿を捉えるや否やに目を丸くした。







「あら、朔夜!? 昨日も早起きだったけど今日は一段と早起きね。天変地異の前触れかしら……」

「母さん。不吉なこと言うもんじゃないよ。きっと朔夜は熱があるんだ。だから病院に――……」

「天変地異の前触れでもないし、熱も無いから!」








昨日も同じような会話をしたような気がする。






と言うか、雪の次は天変地異か。





ため息をつくと、いつの間にかいた夜空の隣に腰をおろして朝食を口に運んだ。










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