闇夜に真紅の薔薇の咲く
ホームルームが終わり、一時間目は移動教室のため朔夜は机から教科書とノート、筆記用具を取りだすと柚梨たちの元まで向かう。




彼女たちは朔夜に気づくなり微笑を浮かべると、誰ともなしに歩きだす。




他愛のない会話を交わしながら廊下へ出たその時、不意に朔夜の右肩がずっしりと重くなった。




何事かと立ち止った彼女が右肩を見ると、そこにはルイの顔が間近にあり彼は目が合うなり柔らかく微笑み手を振る。






「やっほー。朔夜ちゃん」

「や、やっほーって……」

「きゃあああ! 瑠衣くんっ」






引きつった表情を浮かべる朔夜とは対照的に、先ほどまで髪をいじっていた麗は黄色い悲鳴を上げて持っていた教科書たちを取り落とす。




頬を紅潮させて彼を見つめる瞳は、まさに乙女そのもので朔夜は無意識に一歩身を引いた。




名前を呼ばれたルイは、先ほどと変わらぬ笑みで麗に向けて手を振ると小首をかしげて見せる。






「ねぇ、オレたちも一緒に行ってもいい?」

「えっと、どうし――」

「はい! 是非! 是非一緒に行きましょう!」





柚梨たちに相談しようとしていた朔夜は、すっかり別人と化した麗が即答した瞬間に思わずその場に座り込む。




頭上で深いため息が落ちるのを聞きながら、朔夜は渋い表情を浮かべ頭を抱えた。




全くもって麗のイケメン好きもいい加減にしてほしい。




イケメン大好きで、自分好みの男性を見るとそれ以外は見えなくなってしまう彼女。




結構な付き合いで少しは慣れたと思っていたのだが、こればかりは頭を抱えられずにはいられない。




(出来る限り、関わりたくないのに……)



別に彼らが嫌いと言うわけではないけれど。









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