闇夜に真紅の薔薇の咲く
(な、何やってるの私はぁぁぁ)




頭を抱えたくなりながら、朔夜はびくびくしながら床を見つめた。




彼はどんな表情をしているだろう。呆れた表情をしているだろうか、それとも鬱陶しげにしているのだろうか。




想像すれば数多と思い浮かぶ彼の表情はどれも朔夜にとっては恐ろしく、ぐっと唇をかみしめる。




と、不意に頬に誰かの手が触れた。大きな手のひらからして、恐らく男――……ルイかノアールだろうか。




顎をくいっと上げられ、驚いて目を見開いている朔夜にノアールは微笑みかけた。






「どうして謝るの? 何もしてないのに、謝らなくていいんだよ」

「……え?」






突然の豹変に呆気に取られて素っ頓狂な声を発した朔夜だったが、教室中に響き渡った黄色い悲鳴でノアールが猫を被った理由をやっと理解する。





恐らく、朔夜が気づかぬうちに自分たちはかなりの人たちに見られていたのだろう。




猫を被っている彼は、当然素顔などさらせるはずもない。




理解した彼女であったが、いかんせんどういう反応をしていいか分からず少し戸惑ったように目を泳がせた。




ここはアレだろうか。やはり、大人の対応とやらをした方が良いのだろうか。




頭の中に、妖艶な笑みを浮かべて「そうね、ごめんなさい」と言っている自分が思い浮かぶ。




(……誰、これ)




うんざりしたように朔夜はため息を落とした。




かなり自分を美化している自分に思わず呆れてしまう。




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