とあるうさぎのお話。
さてさて、可哀想なこうさぎ。


こうさぎは、冷たくて暗い場所でひとりぼっちで震えていました。

(ここは、どこだろう?なんだかひどく寒いや。……………あれ?僕は、どうしてここにいるのかな?おかあさんは?森は?あれ?)

寒くて冷たくて暗くて怖くて何故だか悲しくて動けなくて、頭の中はぐるぐる回って―――

ぷつり。こうさぎの中の何かが切れて、こうさぎは考えることをやめました。

(もう一度、眠ろう。きっと、次に起きた時にはおかあさんがいるから。そして柔らかい笑顔で、ただいま、って言ってくれるから。)

こうさぎはゆっくりと目を閉じ、深い深い眠りにつきました。



それから、どれくらい経ったのか。

こうさぎが次に目を開けると、今度は暖かい何かに抱き締められていました。

ふかふかで暖かくて良い匂いがする、優しいおかあさんでした。

「おかあさん……!」

おかあさんは、ぎゅうっとこうさぎを抱き締めて、ふんわりと微笑みます。安心して、と優しく囁くかのように。


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