とあるうさぎのお話。
――幸せだなぁ。こうさぎはうっとりと目を細め、暖かいおかあさんの胸に顔を埋めます。
こうさぎは、この幸せが永遠に続けばいいのに、と願います。
しかし、そんなこうさぎの小さな願いすら許さないかのように、だんだんと霞んで朧気になっていくおかあさん。
「ねぇ、こうさぎ。あなたは、早くこの夢から覚めなければいけないわ。」
優しくおかあさんがこうさぎに話しかけます。
「こうさぎ。あなたはもう子供じゃない。一人で生きていかなければならないの。」
「嫌だ!嫌だよ!一人でなんか生きていけない!寂しいのは嫌だ……!」
こうさぎはぶんぶんと頭を振って駄々をこねます。
自分にはおかあさんしかいないのに。おかあさんと離れたくない。嫌だ。そんな思いがこうさぎの頭の中を駆け巡ります。
「こうさぎ、聞いて。」
「やだやだやだやだ!!!!」
「こうさぎ、聞いて!あのね、おかあさんはもう一緒には居られないの。でもこうさぎを一人にする事はおかあさんだって嫌なの。」
「だったら……」
「だからね、こうさぎを死なない体にしてあげる。」
「……え?」
それは、おかあさんの精一杯の優しさであり、そして残酷な言葉でもありました。