ダブルスウィッチ
それなのに振り返った亮介の目に甘さなど少しもない。


それどころか苛立ったようにえみりを睨み付けてくる。


「なんの嫌がらせだ」


一言だけ吐き捨てた亮介の言葉に目を見開いた。


嫌がらせなどしたつもりはない。


なのに今朝起きてから今までで、えみりのとった行動は亮介には嫌がらせに映ったんだろうか?


「そんなつもりじゃ……」


こんな亮介は初めてだった。


神経質なところはあるけれど、ホテルで見る彼はいつも優しくて、意地悪なところはあったけれど、そこにはちゃんと甘さも含まれてた。


「夜は食べてくる

先に寝てていい」


立ち尽くすえみりにそう言い残して、亮介は壁にかかっている金色の装飾で縁取られた鏡で自分の姿をチェックすると、何事もなかったかのように玄関を出ていった。


真っ白な壁とドア。


3畳はありそうな玄関の角には大きな観葉植物が生い茂っている。


天井には立派な柱が二本通されており、磨りガラスで光が注ぐようになっていた。


そんな広い玄関に一人佇むえみりは、呆然と亮介が出ていった後のドアを見つめていた。


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