ダブルスウィッチ
どのくらいそうしていただろうか?


えみりはハッと我に返ると、寝室へと急いだ。


たぶん、バッグの中に携帯が入っているはずだ。


昨日、彩子が持っていたバッグを思い出しながら、クローゼットの中やサイドテーブルの辺りを探して回った。


けれどそれらしきものは見当たらない。


仕方なく今度は一階に降りて、リビングやキッチンなどをくまなく探した。


ようやく見つけたそれはキッチンからランドリー室に続く場所にある小さなスペースに置かれていた。


アイロンをかけたり、繕い物をしたりする場所なのかもしれない。


横に設けられた小さな本棚には、料理や着物、編み物や英会話の本まで並べられている。


それだけ見ても、よく出来た妻なのだということがひしひしと伝わってきた。


きちんと整頓された机の上に無造作に置かれたバッグだけが、なんだか浮いて見える。


中を見ると、昨日彩子と共に飲んだカプセルが一つだけポツンと残されていた。


その奥にある携帯電話を見つけると、慌てて取り出し開いてみる。


着信は、ない。


< 107 / 273 >

この作品をシェア

pagetop