ダブルスウィッチ
ようやく本音が出た、とえみりは思った。

今までずっとクールなふりをして、本音は奥底にしまいこんでいたんだろうから、と。

亮介は彩子の愛を信じていないのだ。

自分の肩書きに飛び付いて結婚した、浅ましい女だとでも思っているのかもしれない。

確かに、最初はそうだったんだろう。

でも彩子はあんなにも亮介を愛してる。

20年一緒に暮らしていたというのに、気づかないものなんだろうか?

あの誓約書に縛られながらも、ずっと亮介を支え続けた彩子の思いを、なぜ汲み取ってやらないのか?



「なに不自由ない?

不自由だらけじゃない!

家の中に縛り付けられて、友達と会うことも、買い物に行くことだって許されない、こんな生活のどこが自由なのよ!」



もしかしたら、彩子はそんなこと思っていないのかもしれないとえみりは思う。

ただ亮介が自分の方を向いてくれたら、喜んでかごの中の鳥でいるんだろう。

けれど不健全な夫婦生活の膿を出さなければ、普通の夫婦になることすら出来ないのだ。

この主従関係は、どう見たって対等じゃない。


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