ダブルスウィッチ
その言葉を聞いて、あの契約書にはなんの効力もないのだとえみりは気付く。


彩子を縛り付けるための紙切れは、彩子がそれを拒否した時点で意味がなくなるのだ。


それをしなかったのは、彩子が亮介のそばにいたかったから。


ただそれだけだったのに、亮介の裏切りに気付いてやりきれなくなったのだろう。


自分もその片棒を担いでいたわけだから、亮介ばかりを責められないけれど、とえみりは落胆した。


でもだからこそ、彩子に罪滅ぼしをしなくちゃならない。


「自由が……欲しいのよ」


亮介の頬がピクッとひきつる。


「……自由?」


「そう、自由

あなたと結婚してから、あの誓約書通りきちんとやってきたつもりよ?

だけどそろそろもう自由にしてくれてもいいと思うの」


自分がそうしてきたわけでもないくせに、えみりの口からはすらすらと言葉が出てくる。


「あの誓約書通りじゃない、普通の生活をさせてほしい」


有り得ないというように頭を振りながら、亮介はえみりを睨み付けた。


「お前にはなに不自由ない生活をさせているだろう?

それにそれをわかった上で俺と結婚したんじゃないのか?

お前だって俺の肩書きで結婚したくせに、いまさらなに言ってるんだ!

お互い様だろ?」


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