ダブルスウィッチ
言いながらえみりはまた胸が苦しくなっていく。


自分から迫った関係が、こんなにも一組の夫婦に影響を与えていたのだと。


「なんで……」


驚いたのは、亮介が思ったよりも動揺していることだった。


彩子にばれてもいいと思っていたのは勘違いだったのかもしれないとえみりは知る。


「知らないとでも思った?」


所在なさげに手を握りしめて、信じられないというように自分の妻を見つめる亮介に、えみりは嘲笑うように言い捨てた。


ゴクリ……と亮介の喉仏が上下する。


いつもの亮介なら一蹴してシラを切っても良さそうなものなのに、それさえ出来ないようだった。


「否定……しないのね?」


否定されたところで、浮気の張本人がここにいるのだ。


追い詰める材料はいくらでもある。


「……そうか、そういうことか」


ハ……と渇いた笑いを漏らした亮介は、ようやく合点がいったというように徐々に落ち着きを取り戻していく。


「それで急に嫌がらせするようになったってわけか」


吐き捨てるようにそう言った亮介の顔は、今までにないくらい嫌悪感に満ちていた。


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