ダブルスウィッチ
声が震えるのを必死に抑えながら、えみりは亮介を睨み付けた。


ソファーに座り足を組み直しながら、亮介はそんな彩子の姿をしたえみりを鼻で笑う。


「それはないだろうな?
彼女は夢を持ってる

その夢を諦めてまで俺と一緒になりたいとは思わないだろうから」


えみりの胸がドキリと高鳴った。


亮介が自分の夢を誰よりも応援してくれていたことを思い出す。


「もし……夢を諦めてもいいからあなたと一緒になりたいって……彼女がそう言ったら?」


ゴクリとえみりは唾を呑み込む。


こんなことを聞いたって何もかわらないのに、亮介の自分への気持ちが知りたかった。


亮介は口の端だけを上げて、バカにしたように笑う。


「夢のないお前にはわからないだろうな?

そんなことで諦めるような夢なら、夢とは言わない

俺がお前と離婚しないのは出世のためだともうわかってるんだろう?

俺もある意味仕事で成功することが夢なんだ

だから彼女の夢も応援したいと思ったし、夢を追いかけて頑張る彼女を愛しいとも思った

彩子には悪いが、愛だの恋だの、そんなことはどうだっていい

お前には家事をしっかりやって家を守ってもらいたいだけだ

それ以上のことは望んじゃいない」


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