ダブルスウィッチ
「別れればいいのか?

そしたら離婚はしないってことか?」


開き直る亮介の言葉に、えみりは憤った。


そんなに簡単に別れられる程度のものだったのかと。


彩子の立場とえみりの立場とで、気持ちが揺れ動く。


「……別れられるの?」


それでもえみりは決心したのだ。


この夫婦を修復し、自分は身を引くのだと。


「あぁ……最初から離婚するつもりはないと伝えてある

だから向こうも俺と一緒になりたいとか、そんなことは考えてないよ」


えみりの心がチリチリと音を立てて焦げ付いていく。


理解などしていなかった。


離婚しないと、面倒なのは嫌なんだと、最初に釘を刺されてもなお、えみりは希望を捨てきれなかったのだ。


もしかしたら奥さんと離婚して自分と一緒になってくれるかもしれない。


そんな淡い期待を抱いて、だからこそ彩子と入れ替わる選択をしたのだから。


「もし……その人が奥さんと別れてほしいって言ったらどうするつもり?」


彩子でいなければならないのに、えみりの気持ちが顔を出す。


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