イケメンSPに守られることになったんですが。


どきどきと、心臓が痛いくらいに鳴る。



『こちらとしては、警察の指示に従います。
とりあえず、発売は延期ということで』


「すみません……」


『いえいえ!事件が解決したら、発売できると思いますから』



米田さんの言葉は私を安心させる反面、不安にもした。


やっぱり事件が解決しなきゃ、発売してもらえないんだ……。



『では、また何かありましたら連絡しますので────』



意外にあっさり、米田さんは電話を切ってしまった。


他の作家さんのお世話もあるのだから、私だけにかまっていられないのは当然だ。


だけど……。



「くそう、いいなあ、出版者勤め!」



私は寂しさを紛らわせるため、わざと大きな声を出してみた。


その声は広すぎる部屋に反響して、余計に自分の小ささを浮き立たせるだけだった。



「…………」



どうしよう、どうしよう。


仕事はないし、小説の更新はできないし、私はいったいどうしたら……。


また無意識のうちに爪を噛んでいると、テーブルにことりと、白いカップが置かれた。


< 53 / 438 >

この作品をシェア

pagetop