イケメンSPに守られることになったんですが。


高浜さんの長い指が、一人の太った人間を描く。



「これが俺の体だとします」



続いて、クリスマスのクッキーみたいなそれの胸部に、2つの丸が描かれた。


しかしそれはただの丸じゃなかった。高浜さんはその丸の下から線を描く。


するとそれは、一つに結ばれた二つの風船になった。


それぞれの風船の中、一方に『亮司』一方には『リョウ』と名前が書き込まれる。



「こっちの亮司が俺で、リョウがあなたに失礼を連発している方です。

どっちも『俺』ではややこしいので、医者がもう一人にリョウという名前をつけました」



……どうリアクションしたらいいの、それ。


黙っていると、高浜さんが勝手に話を続ける。



「見ていただくとおり、俺たちは根っこの部分は一緒です。

しかし、それぞれはこの風船みたいに、違う物体……いえ、違う人格だと思ってください。

俺の言動は俺のもの、リョウの言動はリョウが起こしているもの。

どっちも、お互いの気持ちや行動を操る事はできません。

できるのは、意見することくらいです」


「…………」


「例えば、俺が朝食にコメを選ぶかパンを選ぶか、決めるのは俺です。

リョウは『パンにしとけば』と頭の中で言う事はできますが、俺の手を操ってパンの袋をとることはできません」


「はあ」


「基本的に、表の世界には俺が出ています。

頭の中にリョウがいつも待機している状態です。

彼が表に出るのは、」



高浜さんは人差し指を私の顔の前に出した。


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