地方見聞録~人魚伝説譚~








「きっとリンは、お化粧するとびっくりするくらい美人になると思うの」




 腕がなる。
 そう言うレトが、なんだか新鮮に見えた。

 確かにリンは美しい娘だろう。





「レトは化粧などはしないのか」

「する時もあるけど……私は」



 何を言おうとしたのかわからない。

 強く吹き付けた風が、レトの言葉を遮った。聞き返す彼女は歩きはじめ、そっと振り返った。





「どうしたの?」

「いや……」





 今なら、人間に恋をした理由もわかる気がした。





  * * *





< 60 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop