地方見聞録~人魚伝説譚~
「きっとリンは、お化粧するとびっくりするくらい美人になると思うの」
腕がなる。
そう言うレトが、なんだか新鮮に見えた。
確かにリンは美しい娘だろう。
「レトは化粧などはしないのか」
「する時もあるけど……私は」
何を言おうとしたのかわからない。
強く吹き付けた風が、レトの言葉を遮った。聞き返す彼女は歩きはじめ、そっと振り返った。
「どうしたの?」
「いや……」
今なら、人間に恋をした理由もわかる気がした。
* * *