地方見聞録~人魚伝説譚~
「レトを見なかったか?」
リンに彼女の居場所を聞けば、丁度来たばかりの商人のもとへいるという。
商人?
「たまにやって来るのよ。多分、他の子の付き添いね」
心配?と意味深な笑みを浮かべたリンに咄嗟に返せず、リンはそのまま去っていく。どうやら今日はセインは海に出ているらしい。
村の中にいるのだから心配など、と思っていたのだが。
ああ、あれか。
すでに荷を下ろした姿は、商人。地面に布をひき、その上には女向けであろう装飾品が並ぶ。
その前にはリンに近い年頃の娘がにぎやかな声をあげて見ていた。その中に見慣れた背を見つける。
とくに用があるわけもない。