地方見聞録~人魚伝説譚~
"違う"ということは大きい。だがそれでも理解し合うことは出来る。
彼女、レトが見たことがなかった人魚である私を救い、手を貸してくれるように。
エノヒは少々驚いたように「そう言ってくれるとは」と言った。
「私は近いうち、かけあってみようと思います」
「それは――――海に戻ると?」
「ええ」
何か聞かれることを覚悟していた。
だがエノヒは何も言わず、ただ「無理をせぬように」とだけ。
その時、ヨウは気づかなかった。
村に来た商人の二人が、ヨウを鋭く見ていたことを――――。
* * *