わたくし、政略結婚いたします!?

「……行きましょう、アリア様」


しばしの沈黙の後、メグが絞り出したような声でそう言った。



「え、でも」


「ケーキが出来上がったら一度報告を、と旦那様に言われてますので」


「そうなの?」


訊ねた私に、ええ、と頷いてメグは歩き出す。


まるで視界に入っていないかのように、ウィルの横をすり抜けた。


私も慌てて後を追う。



「……!」



すれ違いざま横目でちらりとウィルを見ると、キュッと眉間にしわを寄せて、どこか傷付いたような表情をしていた。



……今まで見た、ウィルは。


全部、つくりものだと分かるか、本物なのかどうなのか分からないものが多いけど。



今の、表情だけは。



────どうしてか、ほんものだって、わかった。



メグの言葉はウィルにちゃんと届いたんだって、分かった。

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