わたくし、政略結婚いたします!?
いくら足を踏まれたって怒ったりしないから────。
その言葉通り、ステップを踏むたび、と言っていいほどヒールで足を踏みつけてしまったというのに、ウィルは決して怒ったりしなかった。
ただ、痛みに顔を微かに歪めるだけ。
いっそ怒ってくれた方が気が楽だと思うくらいに、申し訳なかった。
でも、そんなウィルの我慢と先生の指導のおかげか、今日のレッスンが終わるころにはウィルの足を踏む回数もだいぶ減っていた。
……まだ、全然上手いとは言えないけれど。
でも、なんとか形にはなった気がする。
「今日は本当にありがとう。おかげで、だいぶ上達した気がする」
練習を終えて帰ろうとしていたウィルにそう声を掛けると、何時間も踊ったことが嘘のように疲れた素振りひとつ見せず、ウィルはにっこり笑ってみせた。
「本当に上達したと思うよ。それに、こちらこそ、君の相手が出来て良かった。明日は頑張ってね」
最後に爽やかな笑みを残して、ウィルは帰っていった。