荒れ球リリーバー
「どうして、私に連絡したのよ。他の女にすればいいじゃない」

さぞや喜んで来たでしょうに。

例えば、週刊誌に載っていた噂の彼女とか、ネックレスを忘れていった彼女とか。

悪態をつきながらも、私はキッチンに立って空腹の元カレの為に包丁を握る。

別れたのに、料理を作るこの手が我ながら憎らしい。

「俺、志乃以外の女の料理食いたくねぇもん」

その言葉に。

ドキッと高鳴る鼓動。

ボッと赤くなる顔面。

嬉しい。

でも、こいつは浮気男。

間に受けちゃダメ。

そう思って。

「また調子のいいこと言ってる。他の女にも、同じこと言ってるんでしょ?」

口答えしたのに。

「志乃にしか言わないよ」

別れた女にサラッとこんな事を真面目な顔で言ってのける男に、更に動揺させられる自分がいる。
< 10 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop