荒れ球リリーバー
手が商売道具である誠一郎にやらせるわけにはいかないと、夕食を終え私は自ら食器洗いを申し出た。

私ったら、すっかり彼女から飯炊き女に降格してる。

時計を見ると、7時過ぎ。

洗い物が終わったら、帰ろう。

ここにいると家事全般に手を出して、飯炊き女から家政婦になりかねない。

ギュッ

「志乃」

素早く帰宅する為に黙々と食器を洗う私を誠一郎は、後ろから抱き締めた。

「今日、泊まってくだろ?」

耳元で囁かれた言葉には答えず。

「ちょっと。やめてよ」

洗い物をする手を止め、160センチという平均的な身長の私を遥か高みから見下ろす長身男を下から睨み付けた。

「私、あんたとは別れたんだけど」

「俺は認めてない」

勝手な事ばかり言う誠一郎は腕の力を強めたかと思うと。

「んっ…ちょっ…セイッ…」

私の首筋に顔を埋め、舌を這わせ始めた。
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