荒れ球リリーバー
当惑の色を浮かべた瞳で画面越しの高身長男を見詰めれば、相変わらず決意に満ちた真摯な表情で言葉を発信し続ける。

『何度裏切っても泣く事なく一緒にいてくれる彼女の強さに、僕は甘えていました。でも、違いました。

先日見た久しぶりの彼女の涙に、気付かされました。本当は強くなんかない。素直じゃない彼女は、人前で泣けないだけだ。見えない所で、一人きりで泣いてたんだ。

生まれた時からずっと一緒なのに、彼女の事を何も理解していなかった自分を僕は不甲斐なく思います』

《素直じゃない》って…。

《生まれた時からずっと一緒》って…。

それって…。まるで…。

懸命な中にどこか後悔の念を漂わせる面持ちの幼馴染みの言葉とそれを反覆する私の胸の内。

どうしよう。

自惚れそう。期待しそう。勘違いしそう。

『それでも僕にとって、彼女は掛け替えのない存在です。だから、言わせて下さい』

昔から見慣れた横顔は、深く大きく呼吸をひとつした後、今一度開口して話を切り出す。
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