荒れ球リリーバー
『志乃』

マイクを通して球場内に響く低い声は、幼い頃から誠一郎と居続ける私自身の名前を確かに呼び掛ける。

「うそっ…」

どこか予想していて、でもやっぱり信じ切れない私は、視線は画面に釘付けのまま、思わず心の声を小さく漏らした。

『傷付けて、我慢させて、ごめん』

なにが、ごめんよ。今更謝っても、遅いんだから。

『今まで俺がした事。謝って許されるなんて思ってない』

そうよ。絶対に許さない。

『それでも、俺……』

それでも、私……。



『やっぱり、志乃が好きだ』

やっぱり、セイが好き。



< 151 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop