荒れ球リリーバー
「もう絶対に志乃を裏切らないって約束する」

誠一郎との約束は、いつだって守られた事なんてないのに。

「志乃を幸せにする」

こいつに、幸せを語る資格なんてないのに。

「だから」

だけど。



「俺と結婚してください」



投球も女癖も荒れている目の前に立つ男がそれでも大好きで、最後にはその身勝手な左手を握り返してしまうの。

夕焼け空の下、互いの小指を結び付けたあの瞬間からずっとずっと欲しかった言葉。

照れた表情と潤んだ瞳を隠す為、誠一郎の胸にそっと自分の顔を埋めながら、いつも通り素直じゃない可愛いげのない言い草で言葉を紡ぎ出す。

「もしも次に浮気したら、本気で許さないからね」

「うん…」

「あんた御用達の週刊誌に有る事無い事言いふらして、球界にいれなくしてやるんだから」

「それは、怖すぎだろ」

「だから……」
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