荒れ球リリーバー





仕事を終えて帰宅すると、玄関に置かれた大きな黒い革靴が目に入った。

「おかえり」

革靴を見詰めて険しい顔付きでその場に佇む私は、突然降り掛かって来た声に遥か頭上を見上げる。

靴の持ち主であるスーツ姿の高身長男が、忌々しいほど爽やかな笑顔で出迎えた。

遠征の移動時にはスーツ着用を義務付けられている誠一郎は、どうやら遠征先からの帰宅がてら我が家に寄ったらしい。

「何しに来たのよ」

「ナニしに来ました」

下ネタを口にして抱き着こうとする誠一郎の頭を反射的に手でひっぱたく。

「帰れ。この変態」

「冗談だよ」

冷たく言い放ったあたしに、セイは苦笑いして頭を擦ってた。

「なぁ、飯食わせて」

「イヤ」

本題を振って来たセイに対して即答した。

飯炊き女は、もうごめんだ。
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