荒れ球リリーバー
この男。

辞典にこそ書かれていないが、投球以上に荒れているものがある。

そのルックスと191センチという高身長を武器に荒ぶるのは、女癖。

誠一郎と私の別れた理由だ。





それは、1週間程前に起こった。

「もうやだ!別れる!」

プロ野球開幕まで、あと2ヶ月弱。

翌日から合宿がスタートするという2月のある晩。

夜景の一望出来る都内高層マンションの一室。

「ちょっ…志乃!落ち着けって!誤解だから」

「誤解?じゃあ、これ誰のよ!?」

声を荒げる私の手には、自分の物でも勿論目の前で焦る浮わついた男の物でもない。

華奢なチェーンのネックレス。

きっと浮気相手の物だ。

なのに、この男と来たらこう答えた。
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