荒れ球リリーバー
「あ~……姉ちゃんの?」

「あんた、姉なんていないでしょ!」

誠一郎は男三兄弟の末っ子。

幼馴染みの私はそれを当然知っているわけで、馬鹿らしい言い訳に素早く突っ込んだ。



若くして高年俸を稼ぐ者もいるプロ野球選手という奴は、とにかくよくモテる。

加えて誠一郎には、人気在京球団のスター選手。

高身長。

男前な容姿が、もれなくオプションで付いてくる。

だから誠一郎の部屋で、明らかに他の女の物を見付けるのは。

浮気されるのは。

何も今回が初めてじゃない。

少なくとも、私が把握してるだけで三回。

更にプロ野球選手は、遠征が多い。

私の目の届かない遠征先では、より一層羽目を外しているに違いない。



俯き加減で次の言い訳を思案してるであろう誠一郎を横目に、私は立ち上がり部屋を後にしようとする。

「志乃!待てよ!」
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