主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
近海で獲れた新鮮な鯛や初摘みの柿など、息吹の妊娠を祝う献上品を持った住人たちが多数押しかけていた。
彼らにとっては山姫でさえ恐ろしい存在のはずだが、主さまが人である息吹を妻に選んだことで、彼らにも少なからず変化が訪れていた。
「これを息吹様に。滋養のあるものを食べて頂かないと」
「……ありがたいが、今はつわりに苦しんでいる。とても食える状態では…」
「それも調べて来ました。どうぞこれを。つわり中でも食べれるような料理を考えて記してきました」
幽玄町に住む住人たちの中で今最も発言力のある中年の男に差し出された巻物を山姫が受け取り、それを主さまに手渡される。
未だ主さまを実際に見たことのない者も多く、幽玄の如き冷淡な美貌の主さまに見惚れる者が続出したので、山姫が主さまの背中を押して屋敷に戻すと戸を閉めた。
「じゃあ、ありがたく受け取っておくよ。無事に産まれたらちゃんと知らせてあげるからね」
「はい、朗報をお待ちしております!」
解散を命じるとぞろぞろ居なくなった住人たちを見送った後、百鬼たちで献上品を屋敷に運び込み、顔を出しに来た息吹がぽかんとした。
「母様…これ…なあに?」
「あんたが子を身籠ったことを知った連中が持ってきたんだよ。ご丁寧につわり中でも食べれる料理を書いた巻物もくれてねえ」
その巻物は主さまが持っているはずだが…
息吹はきょろりと辺りを見回してから夫婦共同の部屋の襖を開けて主さまを発見すると、中に入って襖を閉めた。
「主さま、母様がその巻物探してたよ」
「よく調べられている。今日から毎日試す。とにかくお前には太ってもらわないと…」
「齧れなくなるからでしょ?」
息吹に茶化されてふっと笑った主さまは、息吹の手を引いて膝に座らせて真っ直ぐな黒髪を撫でた。
「…今はつわりは無いのか?」
「うん、落ち着いてるかも。主さまが買ってきてくれたお饅頭食べたからかな」
「つわりが和らぐならいつでも買って来てやる。そろそろ寝た方がいい。客間に連れて行ってやる」
――優しい主さま。
抱き上げてもらった息吹は、この人の妻になれて本当によかったと幸せを噛み締めながら、主さまの首に腕を回して抱き着いた。
彼らにとっては山姫でさえ恐ろしい存在のはずだが、主さまが人である息吹を妻に選んだことで、彼らにも少なからず変化が訪れていた。
「これを息吹様に。滋養のあるものを食べて頂かないと」
「……ありがたいが、今はつわりに苦しんでいる。とても食える状態では…」
「それも調べて来ました。どうぞこれを。つわり中でも食べれるような料理を考えて記してきました」
幽玄町に住む住人たちの中で今最も発言力のある中年の男に差し出された巻物を山姫が受け取り、それを主さまに手渡される。
未だ主さまを実際に見たことのない者も多く、幽玄の如き冷淡な美貌の主さまに見惚れる者が続出したので、山姫が主さまの背中を押して屋敷に戻すと戸を閉めた。
「じゃあ、ありがたく受け取っておくよ。無事に産まれたらちゃんと知らせてあげるからね」
「はい、朗報をお待ちしております!」
解散を命じるとぞろぞろ居なくなった住人たちを見送った後、百鬼たちで献上品を屋敷に運び込み、顔を出しに来た息吹がぽかんとした。
「母様…これ…なあに?」
「あんたが子を身籠ったことを知った連中が持ってきたんだよ。ご丁寧につわり中でも食べれる料理を書いた巻物もくれてねえ」
その巻物は主さまが持っているはずだが…
息吹はきょろりと辺りを見回してから夫婦共同の部屋の襖を開けて主さまを発見すると、中に入って襖を閉めた。
「主さま、母様がその巻物探してたよ」
「よく調べられている。今日から毎日試す。とにかくお前には太ってもらわないと…」
「齧れなくなるからでしょ?」
息吹に茶化されてふっと笑った主さまは、息吹の手を引いて膝に座らせて真っ直ぐな黒髪を撫でた。
「…今はつわりは無いのか?」
「うん、落ち着いてるかも。主さまが買ってきてくれたお饅頭食べたからかな」
「つわりが和らぐならいつでも買って来てやる。そろそろ寝た方がいい。客間に連れて行ってやる」
――優しい主さま。
抱き上げてもらった息吹は、この人の妻になれて本当によかったと幸せを噛み締めながら、主さまの首に腕を回して抱き着いた。