主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
銀を筆頭に百鬼たちの便宜の計らいのおかげで、主さまは夜明け前に百鬼夜行を切り上げて屋敷に戻ることができるようになった。
彼らにとっては息吹は我が子であり、お姫様だ。
息吹が小さな頃どれだけ自分が遊んでやったとか何かを貰ったとか、いつも競い合って話の種にするほど今も息吹を可愛がっている。
その息吹が主さまの子を妊娠したというのだから彼らにとっては一大事で、そしていずれか自分たちを率いる百鬼夜行の王になるかもしれないので、無事に産まれてきてほしいという思いが強い。
「よし……今日も行くか」
百鬼夜行を早めに切り上げた主さまは、一旦庭へ降りると気配を忍ばせて井戸に向かい、手桶に水を汲んでから赤い花を一輪摘むと水に付けて自らの脚で裏山を上がった。
…実は息吹のつわりが始まって地主神の元を訪れることができなくなってからは、息吹の代わりと言っては何だが主さまがお参りに行くのが何故か日課になっていた。
このことを息吹は知らないが、別に知る必要もないし、逆に知られると恥ずかしいし照れくさいので言わないと決めている。
「願掛けなどしたくはないが…息吹が妊娠は地主神のおかげだと信じているので来てやったぞ」
それにしても不遜な態度だが、大きな石の傍に先程摘んだ花を置き、乾いた祠に水をかけてから地主神の前に立つと、少しだけ頭を下げる。
息吹のつわりがせめて楽になりますように、と心の中で願掛けをして、大きな石を撫でた。
「次は息吹の箪笥の引き出しからこっそり手拭いを持って来る。色は俺に任せてくれ」
もちろん返事はないし、返事など返ってくるはずがないのでそのまま踵を返した主さまは山を下りて、何食わぬ顔をして裏山側にある客間の障子を開けて息吹がちゃんと寝ているか確認をした。
「…ちゃんと寝ているな。おいお前、息吹をあまり苦しめるな。あまり苦しめるとお前が産まれてきた時俺がいじめるからな」
「……ふふっ、それじゃ潭月さんと同じだよ」
いつから起きていたのか、息吹の腹に呼びかけていた主さまは息吹の笑い声にぎょっとして腹の上に置いていた手を離した。
「性格の悪い奴だな、寝たふりをしていたのか?」
「違うよ、今起きたの。主さまお帰りなさい。今日も早かったね」
「あいつらが気を利かせている。産まれてくるまでは早く戻って来る」
「そうなの?私は嬉しいけど…みんなにお礼を言わないと」
息吹の顔色が少しだけ良くて、もそもそと隣に潜り込んだ主さまは息吹を抱きしめて直に腹を撫でてやった。
彼らにとっては息吹は我が子であり、お姫様だ。
息吹が小さな頃どれだけ自分が遊んでやったとか何かを貰ったとか、いつも競い合って話の種にするほど今も息吹を可愛がっている。
その息吹が主さまの子を妊娠したというのだから彼らにとっては一大事で、そしていずれか自分たちを率いる百鬼夜行の王になるかもしれないので、無事に産まれてきてほしいという思いが強い。
「よし……今日も行くか」
百鬼夜行を早めに切り上げた主さまは、一旦庭へ降りると気配を忍ばせて井戸に向かい、手桶に水を汲んでから赤い花を一輪摘むと水に付けて自らの脚で裏山を上がった。
…実は息吹のつわりが始まって地主神の元を訪れることができなくなってからは、息吹の代わりと言っては何だが主さまがお参りに行くのが何故か日課になっていた。
このことを息吹は知らないが、別に知る必要もないし、逆に知られると恥ずかしいし照れくさいので言わないと決めている。
「願掛けなどしたくはないが…息吹が妊娠は地主神のおかげだと信じているので来てやったぞ」
それにしても不遜な態度だが、大きな石の傍に先程摘んだ花を置き、乾いた祠に水をかけてから地主神の前に立つと、少しだけ頭を下げる。
息吹のつわりがせめて楽になりますように、と心の中で願掛けをして、大きな石を撫でた。
「次は息吹の箪笥の引き出しからこっそり手拭いを持って来る。色は俺に任せてくれ」
もちろん返事はないし、返事など返ってくるはずがないのでそのまま踵を返した主さまは山を下りて、何食わぬ顔をして裏山側にある客間の障子を開けて息吹がちゃんと寝ているか確認をした。
「…ちゃんと寝ているな。おいお前、息吹をあまり苦しめるな。あまり苦しめるとお前が産まれてきた時俺がいじめるからな」
「……ふふっ、それじゃ潭月さんと同じだよ」
いつから起きていたのか、息吹の腹に呼びかけていた主さまは息吹の笑い声にぎょっとして腹の上に置いていた手を離した。
「性格の悪い奴だな、寝たふりをしていたのか?」
「違うよ、今起きたの。主さまお帰りなさい。今日も早かったね」
「あいつらが気を利かせている。産まれてくるまでは早く戻って来る」
「そうなの?私は嬉しいけど…みんなにお礼を言わないと」
息吹の顔色が少しだけ良くて、もそもそと隣に潜り込んだ主さまは息吹を抱きしめて直に腹を撫でてやった。