主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
数日が経ち、それからというものの、朔は百鬼たちの注目の的となってしまい、主さまの臍を思いきり曲げることになってしまっていた。
息吹は皆に可愛がられて大きな黒瞳をぱっちり開いている朔を膝に乗せつつ縁側で、お披露目をしていた。
「こりゃめんこい。この子が2代目になるのか。1人目から男とは幸先がいいな」
「残念ながら主さまに似ているようだぞ。俺は息吹似の子が産まれると思って楽しみにしていたのに」
「……おい」
「俺たちを見ても物怖じしないのは息吹似だな。だが2人目は息吹似がいい!中身も外見も主さまに似てしまうと将来大変なことになりそうだからな」
「………おい」
好き勝手に話している百鬼たちに不機嫌顔の主さまが声をかけるが、朔に夢中になっている百鬼たちは主さまの声が届かず、息吹を笑わせた。
「朔ちゃんが疲れちゃうからそろそろお開きにするね。主さま、こっちこっち」
「……ああ」
夫婦共同の部屋だけは、何人たりとも入ることは許されていない。
息吹はその部屋に主さまを誘って朔を腕に抱かせると、背伸びをして少しだけ膨れている頬を指で突いた。
「みんな主さまのことが大好きだから憎まれ口を言ってるんだよ」
「……そんなことはわかっている」
「そお?ねえ、酒呑童子さんたちはどうしてるのかな。部屋からほとんど出てこないよね」
――騒動が沈静化して以来、酒呑童子は割り当てた客間から出てこない。
椿姫は時々部屋を出て一緒にお茶を呑んだりしていたが、すぐ客間に戻ってしまうので、椿姫と仲良くなりたい息吹としては2人のことが気になって仕方なくなっていた。
「あれらは残りわずかな時を夫婦として共に歩むことにした。共に同じ命の長さで死ねるのなら、本望だそうだ」
息吹の瞳が潤むと、主さまは焦りながら畳の上に座らせて胸元に顔を押し付けさせた。
「…それが幸せだと言っていたじゃないか。何故お前が泣く必要がある?」
「ごめんなさい…わかんないけど…涙が止まんないの…」
「…いい。好きなだけ泣け」
胸元が濡れる感触に、主さまは何度も息吹の髪を撫でながら床で寝ている我が子に目を遣って、時が流れてゆく。
息吹は皆に可愛がられて大きな黒瞳をぱっちり開いている朔を膝に乗せつつ縁側で、お披露目をしていた。
「こりゃめんこい。この子が2代目になるのか。1人目から男とは幸先がいいな」
「残念ながら主さまに似ているようだぞ。俺は息吹似の子が産まれると思って楽しみにしていたのに」
「……おい」
「俺たちを見ても物怖じしないのは息吹似だな。だが2人目は息吹似がいい!中身も外見も主さまに似てしまうと将来大変なことになりそうだからな」
「………おい」
好き勝手に話している百鬼たちに不機嫌顔の主さまが声をかけるが、朔に夢中になっている百鬼たちは主さまの声が届かず、息吹を笑わせた。
「朔ちゃんが疲れちゃうからそろそろお開きにするね。主さま、こっちこっち」
「……ああ」
夫婦共同の部屋だけは、何人たりとも入ることは許されていない。
息吹はその部屋に主さまを誘って朔を腕に抱かせると、背伸びをして少しだけ膨れている頬を指で突いた。
「みんな主さまのことが大好きだから憎まれ口を言ってるんだよ」
「……そんなことはわかっている」
「そお?ねえ、酒呑童子さんたちはどうしてるのかな。部屋からほとんど出てこないよね」
――騒動が沈静化して以来、酒呑童子は割り当てた客間から出てこない。
椿姫は時々部屋を出て一緒にお茶を呑んだりしていたが、すぐ客間に戻ってしまうので、椿姫と仲良くなりたい息吹としては2人のことが気になって仕方なくなっていた。
「あれらは残りわずかな時を夫婦として共に歩むことにした。共に同じ命の長さで死ねるのなら、本望だそうだ」
息吹の瞳が潤むと、主さまは焦りながら畳の上に座らせて胸元に顔を押し付けさせた。
「…それが幸せだと言っていたじゃないか。何故お前が泣く必要がある?」
「ごめんなさい…わかんないけど…涙が止まんないの…」
「…いい。好きなだけ泣け」
胸元が濡れる感触に、主さまは何度も息吹の髪を撫でながら床で寝ている我が子に目を遣って、時が流れてゆく。