主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
夕方になると、庭には所狭しと百鬼が集結した。

皆が皆揃って酒呑童子を警戒していたが…なにぶん酒呑童子の膝には朔が心地よさそうに座っていたので手を出すわけにもいかずにじりじりしていた。


「主さま、なんで俺たちがそいつらのために探さなきゃいけないんですか」


「不満があれば捜索隊から外す。俺は捜索に加わり、百鬼夜行は銀が代行する。どちらについてもいいが、酒呑童子と椿姫に手を出すな。手を出せば…わかっているな?」


牙を見せてにやりと笑った主さまの様相に肝が縮んだ百鬼たちが委縮していると、主さまの隣に座っていた息吹が主さまの頭をぺちんと叩いて皆に笑いかける。


「私からもみんなにお願い。ふたりには幸せに過ごしてほしいから…だから…」


「息吹の頼みなら仕方ねえなあ。しょうがねえ、やるかー」


それまで不満をぶつぶつ口にしていた恐ろしい姿の百鬼たちがころっと態度を変えると、主さまは叩かれた頭をさすりながらも少し嬉しそうにしつつ、にやにやしている銀を呼び付ける。


「というわけでお前が百鬼夜行の代行だ」


「何度目だと思っているんだ。もう代行ではなく俺が主になってお前は隠居でいいんじゃないか?」


「ふざけるな。お前に譲る気など毛頭ない」


「銀さんお願いね。若葉は私が預かっておくから」


「うむ、それならいいか。まるであれだな、若葉は俺と息吹の子のような…おっと」


息吹の隣に座って息吹の首筋をくんくん匂っていた銀に鋭い爪を一閃させて頬に傷をつけた主さまは、腰を上げて百鬼たちに命令した。


「いいか、隈なく捜せ。俺たちとは違い、あいつらは残された時間が少ない。悠長にやっていると百鬼から外すぞ」


――百鬼たちにとっては、百鬼夜行の一員として主さまの後を続くことは名誉だ。

またすくすくと育っている朔が次代の百鬼夜行の主となることを嬉しく思い、傍で見守ることのできることも名誉であり、楽しみのひとつ。


「行くぞ」


「主さま行ってらっしゃい。気を付けてね」


「…ああ。山姫、雪男、頼んだぞ」


「あいよ」


山姫が返事をすると、二手に分かれた銀と主さまの後を百鬼たちが続いた。
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