主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
主さまは元々寝ることが大好きだ。
それは息吹が小さな頃からだったので、朝になってもぐっすり眠っている主さまを起こさないようにと、息吹はそっと床を抜け出した。
「やあ息吹。早いねえ」
「あ、父様っ。おはようございます、朝早くからどうしたの?」
「椿姫の身体から毒素が抜けたのか確認しに来たのだよ」
平安町の屋敷で寛いでいる時のように、烏帽子を被らず髪をひとつに束ねただけの晴明は、優男の顔にやわらかな笑みを浮かべた。
息吹にとって義父であれど小さな頃から育ててくれた晴明の存在は唯一無二だ。
息吹が喜び勇んで晴明に抱き着くと、早速狸寝入りしている何者かの殺気が飛んで来た。
「ああ怖い怖い。男の嫉妬というものは醜いねえ」
「え?父様?」
「なんでもないよ。どれ、椿姫たちは起きているかな?」
主さまをからかうことに関して天性の才能を発揮する晴明は、笑みを噛み殺しながら息吹の肩を抱いて酒呑童子たちの部屋を目指す。
白狐の晴明の耳は非常に良くできているので彼らが起きているかなど実はとっくにわかっていたのだが、息吹とたわいない会話をすることも大好きだ。
山姫を妻に迎えたとはいえ、息吹は娘なのだから、子は成さぬと決めていた。
ずっとこれからも、唯一無二の娘。
「あ、話し声が聞こえる。父様、椿さんたち起きてるみたい」
「では私が調べてみよう」
ぽすぽすと襖を叩いて声をかけると、中から椿姫の明るい返事が聞こえた。
息吹は晴明と主さまのことを信じきっている。
だからこそ、椿姫が普通の人間に戻っているのだ、と分かりきっている。
「息吹さんっ」
「椿さん!その…どう?どうだったの?」
すぐさま駆け寄ってきた椿姫と息吹がきゃっきゃと声を上げているのを晴明は扇子を仰ぎながら鑑賞。
「いやあ、絶景絶景」
「…………」
酒呑童子から無言で睨まれた晴明は、椿姫の頭のてっぺんからつま先までさっと視線を走らせると、肩を竦めた。
「さすがは私だ。あの泉は予想通り神聖なものだったようだねえ」
「……感謝…している」
「いや何、可愛い愛娘のためだ。そなたが憂うことではない」
扇子で口元を隠してくすくす笑っている晴明。
こいつも敵に回したくはない、と思った酒呑童子は深いため息をついた。
それは息吹が小さな頃からだったので、朝になってもぐっすり眠っている主さまを起こさないようにと、息吹はそっと床を抜け出した。
「やあ息吹。早いねえ」
「あ、父様っ。おはようございます、朝早くからどうしたの?」
「椿姫の身体から毒素が抜けたのか確認しに来たのだよ」
平安町の屋敷で寛いでいる時のように、烏帽子を被らず髪をひとつに束ねただけの晴明は、優男の顔にやわらかな笑みを浮かべた。
息吹にとって義父であれど小さな頃から育ててくれた晴明の存在は唯一無二だ。
息吹が喜び勇んで晴明に抱き着くと、早速狸寝入りしている何者かの殺気が飛んで来た。
「ああ怖い怖い。男の嫉妬というものは醜いねえ」
「え?父様?」
「なんでもないよ。どれ、椿姫たちは起きているかな?」
主さまをからかうことに関して天性の才能を発揮する晴明は、笑みを噛み殺しながら息吹の肩を抱いて酒呑童子たちの部屋を目指す。
白狐の晴明の耳は非常に良くできているので彼らが起きているかなど実はとっくにわかっていたのだが、息吹とたわいない会話をすることも大好きだ。
山姫を妻に迎えたとはいえ、息吹は娘なのだから、子は成さぬと決めていた。
ずっとこれからも、唯一無二の娘。
「あ、話し声が聞こえる。父様、椿さんたち起きてるみたい」
「では私が調べてみよう」
ぽすぽすと襖を叩いて声をかけると、中から椿姫の明るい返事が聞こえた。
息吹は晴明と主さまのことを信じきっている。
だからこそ、椿姫が普通の人間に戻っているのだ、と分かりきっている。
「息吹さんっ」
「椿さん!その…どう?どうだったの?」
すぐさま駆け寄ってきた椿姫と息吹がきゃっきゃと声を上げているのを晴明は扇子を仰ぎながら鑑賞。
「いやあ、絶景絶景」
「…………」
酒呑童子から無言で睨まれた晴明は、椿姫の頭のてっぺんからつま先までさっと視線を走らせると、肩を竦めた。
「さすがは私だ。あの泉は予想通り神聖なものだったようだねえ」
「……感謝…している」
「いや何、可愛い愛娘のためだ。そなたが憂うことではない」
扇子で口元を隠してくすくす笑っている晴明。
こいつも敵に回したくはない、と思った酒呑童子は深いため息をついた。