主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
…随分長く飛んでいる。
最初は景色を楽しんでいた息吹だったが、ちらりと目をあげると…主さまは不機嫌そうな顔をしていた。
「ねえ主さま」
「…なんだ」
「どこに行くの?それくらい教えてくれたって…」
「…もう着く」
元々口数の少ない男なので、端的な口調も気にしないが、それにしてもめでたいことの後なのにこの様子ーー
「見えてきたぞ」
「……え…あれって…」
目を凝らすと、山奥の中にーーぽつんと家がある。
新しくはないが古くもなく、小さな庭があり、井戸もある。
息吹が穴が空くほど主さまの顔を見ていると、その視線を避けるようにふいっと顔を逸らし、小さな庭に降り立った。
「家…?」
「…ここを隠れ家にしようと思っていたが、仕方ない」
「何が仕方ないの?わあ、素敵な家…」
「ここを酒呑童子たちにくれてやる。ここで暮らせばいい」
随分前に、ふたりだけで過ごせる家があるといい、と話していたことを思い出した。
息吹は大所帯の暮らしも気にしないので家を探すことなど考えていなかったが…主さまは違ったようだ。
ここで…私と主さまが?」
「その予定だったが、事情が変わった。…今日位はここで過ごしてもいいだろう」
とすんと縁側に腰掛けた主さまの隣にさっと腰掛けた息吹は、ややふくれっ面の主さまの頬を指で突いた。
「主さま…嬉しい」
「………今日だけだ。明日からはまたいつもの…」
途中で言葉を失う。
息吹にぎゅっと抱き着かれて閉口した主さまは、息吹の背中に腕を回して抱きしめてやると、深いため息をつく。
「まさか主さまが他愛のない話を覚えてくれてるなんて…」
「俺は記憶力がいいんだ。…あいつらさえ現れなければ、こんなことには…」
言いかけて全ての元凶は自分にあったのだと思い出して、また黙り込む。
息吹はそれに気付いていたが、敢えて何も言わずに主さまに抱きしめられ続けた。
最初は景色を楽しんでいた息吹だったが、ちらりと目をあげると…主さまは不機嫌そうな顔をしていた。
「ねえ主さま」
「…なんだ」
「どこに行くの?それくらい教えてくれたって…」
「…もう着く」
元々口数の少ない男なので、端的な口調も気にしないが、それにしてもめでたいことの後なのにこの様子ーー
「見えてきたぞ」
「……え…あれって…」
目を凝らすと、山奥の中にーーぽつんと家がある。
新しくはないが古くもなく、小さな庭があり、井戸もある。
息吹が穴が空くほど主さまの顔を見ていると、その視線を避けるようにふいっと顔を逸らし、小さな庭に降り立った。
「家…?」
「…ここを隠れ家にしようと思っていたが、仕方ない」
「何が仕方ないの?わあ、素敵な家…」
「ここを酒呑童子たちにくれてやる。ここで暮らせばいい」
随分前に、ふたりだけで過ごせる家があるといい、と話していたことを思い出した。
息吹は大所帯の暮らしも気にしないので家を探すことなど考えていなかったが…主さまは違ったようだ。
ここで…私と主さまが?」
「その予定だったが、事情が変わった。…今日位はここで過ごしてもいいだろう」
とすんと縁側に腰掛けた主さまの隣にさっと腰掛けた息吹は、ややふくれっ面の主さまの頬を指で突いた。
「主さま…嬉しい」
「………今日だけだ。明日からはまたいつもの…」
途中で言葉を失う。
息吹にぎゅっと抱き着かれて閉口した主さまは、息吹の背中に腕を回して抱きしめてやると、深いため息をつく。
「まさか主さまが他愛のない話を覚えてくれてるなんて…」
「俺は記憶力がいいんだ。…あいつらさえ現れなければ、こんなことには…」
言いかけて全ての元凶は自分にあったのだと思い出して、また黙り込む。
息吹はそれに気付いていたが、敢えて何も言わずに主さまに抱きしめられ続けた。