主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
その日の夜は、いつもとは違うものになった。


ひとつ同じ布団なのは相変わらずだったが……


お互いの息遣いや表情、仕草ーー

誰にも邪魔されない空間だからこそ、大胆になり、いつもとは違う自分になれる。

軽く唇が触れ合うだけで、身体中に稲妻が走り、息が詰まる。


「なんか…私…変…」


「…俺も変だ。気にするな」


素肌で触れ合う温もりに心から安堵を覚え、主さまが空に手を伸ばすと、青白い鬼火が飛び交った。


「主さまは何人子供欲しい?」


「…できるだけ」


「えっ!?が…頑張ります」


「朔が跡を継げば、俺たちはあの屋敷を出て行く。どこか遠い所に住もう」


「うん、楽しみだね」


主さまの腕枕は固いのだが、息吹は文句を言わずに身体を寄せて白い頬を指で突く。


「でも父さまがなんて言うかな」


「…お前も晴明もそろそろ子離れ親離れしろ」


「えーっ?それは無理だよ、父様は大切な方だもの」


ーー俺のことは大切じゃないのか、と言いかけて心の狭い自身を嘆いた主さまだったが、息吹を抱きしめて腕の中に閉じ込めると、深い溜め息をついた。


「…俺は今後もずっとあいつにいびられる運命なわけだな」


「父様は主さまをいびったりしないでしょ?言いがかりはやめたほうがいいよ」


「…お前の目は節穴か?……もういい」


汗が冷えて寒くならないように頭から布団を被ってもみくちゃになったふたりは、くすくす笑いながらまた唇を重ねる。


いつまでも、新婚気分。


いつまでも、愛しい人。
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