主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
翌日早朝、ふたりが幽玄町に戻ると、突然行方不明になった主さまたちを心配して待ち構えていた雪男たちからーー雷を食らった。
「どこ行ってたんだ!心配したんだぞ!」
「少し遠出をしていた。…そんなに目くじらを立てるな」
「全く…息吹も居なくなったから本当に心配したんだからな」
くどくどと小言を言う雪男に平身低頭な息吹とは真逆の態度で縁側で煙管を吹かした主さまは、にやついて扇子をはたいている晴明をちらりと盗み見た。
「いい場所のようだな。椿姫たちもゆるりと暮らすことができよう」
「!?…どういう意味…まさかお前…つけて…」
「なに、式神を少し飛ばしただけなのだが。愛しい愛娘に何かあってはいけないからねえ」
「何かあるわけないだろうが。…お前そろそろ子離れしろ。ここに通いすぎだぞ」
「いやいや、そなたをからかうのが面白くてつい来てしまうのだよ」
今度は山姫から小言を食らっている息吹を不憫に思いながらも、目前の敵に油断することはできない。
今度はこっちが反撃してやるといわんばかりに、主さまは煙を空に吐きながら、何の気なしに言ってみた。
「なるほど、お前は親離れできないわけだな。いつまでも俺の傍に居たいんだろう」
「…………」
ーー沈黙。
思いの外長い沈黙に顔を上げた主さまはーー
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしている晴明の顔を見て、ぽろりと煙管を落とした。
「ず…図星なのか…?」
「……まさか。突拍子もないことを言われて面食らったのだよ」
ふいっと顔を背けてその場から風のように居なくなった晴明は…明らかに、照れていた。
「…恐ろしいものを見た…」
晴明が幼子の頃から育ててきた。
親代わりに違いないが、晴明が動じることは滅多になかったので、心の底から肝が冷えた主さまは、身震いして煙管を拾った。
「ああ怖かった!すっごく怒られちゃった…。主さま?どうしたの?」
「…いや、なんでもない」
告げ口してやろうかと一瞬考えたが、晴明の弱味を握ってしてやったりな主さまは、上機嫌に朔を膝に乗せるとしばらくの間、にやにやしっぱなしだった。
「どこ行ってたんだ!心配したんだぞ!」
「少し遠出をしていた。…そんなに目くじらを立てるな」
「全く…息吹も居なくなったから本当に心配したんだからな」
くどくどと小言を言う雪男に平身低頭な息吹とは真逆の態度で縁側で煙管を吹かした主さまは、にやついて扇子をはたいている晴明をちらりと盗み見た。
「いい場所のようだな。椿姫たちもゆるりと暮らすことができよう」
「!?…どういう意味…まさかお前…つけて…」
「なに、式神を少し飛ばしただけなのだが。愛しい愛娘に何かあってはいけないからねえ」
「何かあるわけないだろうが。…お前そろそろ子離れしろ。ここに通いすぎだぞ」
「いやいや、そなたをからかうのが面白くてつい来てしまうのだよ」
今度は山姫から小言を食らっている息吹を不憫に思いながらも、目前の敵に油断することはできない。
今度はこっちが反撃してやるといわんばかりに、主さまは煙を空に吐きながら、何の気なしに言ってみた。
「なるほど、お前は親離れできないわけだな。いつまでも俺の傍に居たいんだろう」
「…………」
ーー沈黙。
思いの外長い沈黙に顔を上げた主さまはーー
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしている晴明の顔を見て、ぽろりと煙管を落とした。
「ず…図星なのか…?」
「……まさか。突拍子もないことを言われて面食らったのだよ」
ふいっと顔を背けてその場から風のように居なくなった晴明は…明らかに、照れていた。
「…恐ろしいものを見た…」
晴明が幼子の頃から育ててきた。
親代わりに違いないが、晴明が動じることは滅多になかったので、心の底から肝が冷えた主さまは、身震いして煙管を拾った。
「ああ怖かった!すっごく怒られちゃった…。主さま?どうしたの?」
「…いや、なんでもない」
告げ口してやろうかと一瞬考えたが、晴明の弱味を握ってしてやったりな主さまは、上機嫌に朔を膝に乗せるとしばらくの間、にやにやしっぱなしだった。