主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
主さまの足取りは淀みない。
…だが…
歩いているのは、幽玄町内だ。
昼間だし、当然住人も歩いているし、昼間はほぼ一切外出することのない主さまを目にした人々がほぼ全員脚を止めてしまう。
「ちょ、主さま、どこに行くの?」
「…遠くなく、誰も来ない場所だ」
だが町内。
主さまの屋敷から徒歩でおよそ10分。
手を引かれて連れて行かれた場所は、幽玄町のど真ん中に値する場所で、家族4人ほどが住める大きさの一軒家だった。
小さな小さな庭があり、覗き込めないほどに高い漆喰の壁がある。
屋根は瓦で、新しく建てられたように綺麗だった。
「ここはどこなの?」
「隠れ家だ」
「隠れ家って…ここ結構人通りも多いよ?すぐみんなに知れちゃうんじゃ…」
「俺がそんなへまをすると思うか?」
自信満々に胸を張る主さま。
息吹があたりを見回すとーー
まるでこの家と自分たちが見えていないかのように、人々がすれ違ってゆく。
これは主さまが何らかの力を使っているのだとわかり、今度は息吹が主さまの袖を引いた。
「主さま、隠れ家っていうのはゆっくりする場所のことであって…」
「俺は十分ゆっくりしている。していないのは…お前だ」
「え…」
息吹に袖を引っ張られたまま主さまは門を潜った。
まだ何も植わっていない庭。
新品の引き戸に誰も座っていないかのように綺麗な縁側。
ここは…
自分がゆっくりする場所なのだ…
主さまが用意してくれた、ほっとする場所。
じん、ときた息吹は、思わず主さまに抱きついて胸に顔を埋めた。
「主さま…」
「…い、言っておくが、俺が休む場所でもある。だから山姫や雪男もここには入れないようにする。…俺とお前だけだ」
本当にふたりだけの隠れ家。
何かあった時でも駆けつけることができるほどの距離で、主さまとふたりきり。
もちろん朔を忘れたわけではないが…
ここは特別な場所。
そんな場所を与えてくれた主さまの腕にひっついて離れなくなった息吹は、きっと自分がいちばん幸せ者だと確信して精一杯愛情を込めて礼を言った。
「十六夜さん…ありがとう…」
…だが…
歩いているのは、幽玄町内だ。
昼間だし、当然住人も歩いているし、昼間はほぼ一切外出することのない主さまを目にした人々がほぼ全員脚を止めてしまう。
「ちょ、主さま、どこに行くの?」
「…遠くなく、誰も来ない場所だ」
だが町内。
主さまの屋敷から徒歩でおよそ10分。
手を引かれて連れて行かれた場所は、幽玄町のど真ん中に値する場所で、家族4人ほどが住める大きさの一軒家だった。
小さな小さな庭があり、覗き込めないほどに高い漆喰の壁がある。
屋根は瓦で、新しく建てられたように綺麗だった。
「ここはどこなの?」
「隠れ家だ」
「隠れ家って…ここ結構人通りも多いよ?すぐみんなに知れちゃうんじゃ…」
「俺がそんなへまをすると思うか?」
自信満々に胸を張る主さま。
息吹があたりを見回すとーー
まるでこの家と自分たちが見えていないかのように、人々がすれ違ってゆく。
これは主さまが何らかの力を使っているのだとわかり、今度は息吹が主さまの袖を引いた。
「主さま、隠れ家っていうのはゆっくりする場所のことであって…」
「俺は十分ゆっくりしている。していないのは…お前だ」
「え…」
息吹に袖を引っ張られたまま主さまは門を潜った。
まだ何も植わっていない庭。
新品の引き戸に誰も座っていないかのように綺麗な縁側。
ここは…
自分がゆっくりする場所なのだ…
主さまが用意してくれた、ほっとする場所。
じん、ときた息吹は、思わず主さまに抱きついて胸に顔を埋めた。
「主さま…」
「…い、言っておくが、俺が休む場所でもある。だから山姫や雪男もここには入れないようにする。…俺とお前だけだ」
本当にふたりだけの隠れ家。
何かあった時でも駆けつけることができるほどの距離で、主さまとふたりきり。
もちろん朔を忘れたわけではないが…
ここは特別な場所。
そんな場所を与えてくれた主さまの腕にひっついて離れなくなった息吹は、きっと自分がいちばん幸せ者だと確信して精一杯愛情を込めて礼を言った。
「十六夜さん…ありがとう…」