主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
少し気分が晴れやかになった息吹は、主さまが首筋の所有印をどう隠そうかと鏡とにらめっこしている間に部屋を出て、縁側で大きく伸びをした。
皆からは首に巻いている手拭いのことを突っ込まれるだろうが、のらりくらりと躱すしかない。
「あれ?雪ちゃんが居ない…。珍しいなあ、夏場なのにお出かけしたのかな」
氷属性の雪男は暑さに滅法弱く、夏になると地下の氷室に籠もっているか涼しい風が入ってくる居間に居る。
だが雪男の姿はどこにもなく、地下の氷室に居るのかもしれないと決め付けた息吹は、冷たいお茶を淹れてあげようと思って台所へ行った。
「きゃ…っ!ゆ、雪ちゃん!?どうしたの!?雪ちゃん大丈夫!?」
戸棚にもたれ掛るようにして座っていた雪男の周囲は水浸しで、力なくうなだれている雪男の表情は見えなかったが…これはもしかしたら溶けかかっているかもしれない。
「あちぃ…。俺もう…駄目かも…」
「駄目なんて言わないで!雪ちゃん行くよ!」
どこに、と言いかけた雪男をひょいっと抱っこした息吹は、驚いてばたばた暴れる雪男に軽く頭突きをして瞳を尖らせた。
「ちょっと黙ってて!とりあえず雪ちゃん、お着物脱いで!」
「はあ…っ!?な、何すんだよ…やめろぉぉ!」
風呂場に雪男を連れ込んだ息吹は、有無を言わさず雪男が着ていた水色の着物を剥ぎ取とると、水風呂の中に放り込んだ。
そうしながら今度は台所に駆け込んで桶と包丁を持つと地下室に向かい、雪男の部屋となっている氷室から氷を沢山削り出してまた風呂場に向かう。
「雪ちゃん氷持ってきたからね!全部入れるからすぐ冷えるはず!溶けちゃ駄目だよ、頑張って!」
「俺、ちっちゃくなってから力の制御があまりできねんだ。息吹…迷惑かけてごめん」
「そんな…私こそ気付いてあげられなくてごめんね。どう?冷えてきた?」
暑さから解放されて芯から冷えてくると、ようやく動くことができるようになった雪男は桧の浴槽にもたれ掛りながら息吹の首に巻いている手拭いに目を遣る。
だが今度は息吹が汗だくになってしまい、頭のどこかで雪男のことを童子だと時々勘違いしている息吹は、すくっと立ち上がるとおもむろに着物を脱ぎ始めた。
「い、いいいい、息吹!?お前、何して…」
「私も汗かいちゃったからついでに一緒に入ってもいい?こんなに氷が入ってたらすぐ冷えるだろうけど。雪ちゃん背中流してあげる」
雪男、爆発寸前。
皆からは首に巻いている手拭いのことを突っ込まれるだろうが、のらりくらりと躱すしかない。
「あれ?雪ちゃんが居ない…。珍しいなあ、夏場なのにお出かけしたのかな」
氷属性の雪男は暑さに滅法弱く、夏になると地下の氷室に籠もっているか涼しい風が入ってくる居間に居る。
だが雪男の姿はどこにもなく、地下の氷室に居るのかもしれないと決め付けた息吹は、冷たいお茶を淹れてあげようと思って台所へ行った。
「きゃ…っ!ゆ、雪ちゃん!?どうしたの!?雪ちゃん大丈夫!?」
戸棚にもたれ掛るようにして座っていた雪男の周囲は水浸しで、力なくうなだれている雪男の表情は見えなかったが…これはもしかしたら溶けかかっているかもしれない。
「あちぃ…。俺もう…駄目かも…」
「駄目なんて言わないで!雪ちゃん行くよ!」
どこに、と言いかけた雪男をひょいっと抱っこした息吹は、驚いてばたばた暴れる雪男に軽く頭突きをして瞳を尖らせた。
「ちょっと黙ってて!とりあえず雪ちゃん、お着物脱いで!」
「はあ…っ!?な、何すんだよ…やめろぉぉ!」
風呂場に雪男を連れ込んだ息吹は、有無を言わさず雪男が着ていた水色の着物を剥ぎ取とると、水風呂の中に放り込んだ。
そうしながら今度は台所に駆け込んで桶と包丁を持つと地下室に向かい、雪男の部屋となっている氷室から氷を沢山削り出してまた風呂場に向かう。
「雪ちゃん氷持ってきたからね!全部入れるからすぐ冷えるはず!溶けちゃ駄目だよ、頑張って!」
「俺、ちっちゃくなってから力の制御があまりできねんだ。息吹…迷惑かけてごめん」
「そんな…私こそ気付いてあげられなくてごめんね。どう?冷えてきた?」
暑さから解放されて芯から冷えてくると、ようやく動くことができるようになった雪男は桧の浴槽にもたれ掛りながら息吹の首に巻いている手拭いに目を遣る。
だが今度は息吹が汗だくになってしまい、頭のどこかで雪男のことを童子だと時々勘違いしている息吹は、すくっと立ち上がるとおもむろに着物を脱ぎ始めた。
「い、いいいい、息吹!?お前、何して…」
「私も汗かいちゃったからついでに一緒に入ってもいい?こんなに氷が入ってたらすぐ冷えるだろうけど。雪ちゃん背中流してあげる」
雪男、爆発寸前。