主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
氷水でよく浸した手で身体を擦ってくれた息吹をまともに見ることのできない雪男は、身体を擦られている間ずっと両手で目を塞いでいた。
「痒いところはない?私の手熱くない?」
「だ、だ、だいじょーぶ。息吹っ、もういいから上がれよ。俺もうちょっと風呂に入ってたいし。氷…ありがとな」
「そう?雪ちゃんどうして目を塞いでるの?」
「はっ!?や、その…うん、石鹸の泡が目に入らないようにしてた。じゃあな息吹、このこと…主さまに話さないでくれると助かるんだけど」
「?うん、じゃあ上がるね。雪ちゃんまた溶けそうになったらすぐ言うんだよ?雪ちゃんが居なくなっちゃうのは…本当につらいから」
身を挺して正気に戻らせてくれた雪男は1度蒸発して命を失いかけた。
晴明の術がなんとか間に合ったことでこの前まで氷の塊だったのだが――今は童子の姿。
「あー…よく見とけばよかった…」
息吹の裸をまともに見ることができなかったが、おいしい目には遭えて、頭まで氷水に浸かって余韻を楽しんだ。
息吹が熱で火傷をさせないように手の感覚がなくなるまで冷やしてくれたおかげで直に身体を触られても痛くもなかったし熱くもなかった。
…好きな女に触られた――
「息吹の手…気持ちよかったなあ…」
また恋心が溢れてくる。
だがこの童子の姿では…とてもではないが、子供扱いをされてしまうだろう。
「大きくなりたい。今すぐ…大きく…。大きくなるんだ…大きく……」
――強く念じると…雪男の身体に変化が起きた。
手足がすらりと伸び、指は細く長くなり、その手で自身の肩や頬を撫でてみる。
ごつごつとした感触――
「…戻った?戻れたのか?」
ざばっと音を立てて立ち上がると、明らかにいつもより視界が高くなっている。
何がなんだかわからないまま、主さま用と思われる白い浴衣を拝借して着ると、ぺたぺた足音を立てながら台所へ向かった。
そこには夕飯の仕込みをしている息吹が背中を向けて魚をさばいていた。
「息吹」
「あ、雪ちゃん上がったの?今忙しいしここ暑くなってるから居間で涼んでて。今主さま機嫌が悪いかもしれないから喧嘩しないようにね。……雪ちゃん?」
雪男の返事がないので息吹が振り返ろうとすると――背中からぎゅうっと抱きしめられた。
それは男の腕の力。
広い胸――
「ゆ…雪ちゃん…!?」
雪男は、元の姿に戻っていた。
「痒いところはない?私の手熱くない?」
「だ、だ、だいじょーぶ。息吹っ、もういいから上がれよ。俺もうちょっと風呂に入ってたいし。氷…ありがとな」
「そう?雪ちゃんどうして目を塞いでるの?」
「はっ!?や、その…うん、石鹸の泡が目に入らないようにしてた。じゃあな息吹、このこと…主さまに話さないでくれると助かるんだけど」
「?うん、じゃあ上がるね。雪ちゃんまた溶けそうになったらすぐ言うんだよ?雪ちゃんが居なくなっちゃうのは…本当につらいから」
身を挺して正気に戻らせてくれた雪男は1度蒸発して命を失いかけた。
晴明の術がなんとか間に合ったことでこの前まで氷の塊だったのだが――今は童子の姿。
「あー…よく見とけばよかった…」
息吹の裸をまともに見ることができなかったが、おいしい目には遭えて、頭まで氷水に浸かって余韻を楽しんだ。
息吹が熱で火傷をさせないように手の感覚がなくなるまで冷やしてくれたおかげで直に身体を触られても痛くもなかったし熱くもなかった。
…好きな女に触られた――
「息吹の手…気持ちよかったなあ…」
また恋心が溢れてくる。
だがこの童子の姿では…とてもではないが、子供扱いをされてしまうだろう。
「大きくなりたい。今すぐ…大きく…。大きくなるんだ…大きく……」
――強く念じると…雪男の身体に変化が起きた。
手足がすらりと伸び、指は細く長くなり、その手で自身の肩や頬を撫でてみる。
ごつごつとした感触――
「…戻った?戻れたのか?」
ざばっと音を立てて立ち上がると、明らかにいつもより視界が高くなっている。
何がなんだかわからないまま、主さま用と思われる白い浴衣を拝借して着ると、ぺたぺた足音を立てながら台所へ向かった。
そこには夕飯の仕込みをしている息吹が背中を向けて魚をさばいていた。
「息吹」
「あ、雪ちゃん上がったの?今忙しいしここ暑くなってるから居間で涼んでて。今主さま機嫌が悪いかもしれないから喧嘩しないようにね。……雪ちゃん?」
雪男の返事がないので息吹が振り返ろうとすると――背中からぎゅうっと抱きしめられた。
それは男の腕の力。
広い胸――
「ゆ…雪ちゃん…!?」
雪男は、元の姿に戻っていた。