主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
戻って来た息吹はてきぱきと山菜ごはんを仕込んで炊き上げると、いつもの面子と、朝餉を一緒にと約束した晴明と、良い匂いを嗅ぎつけてやって来た銀と共に美味しい山菜ごはんを食べた。
「んん、美味い。おっと若葉、お前はまだ食えないぞ」
若葉を膝に乗せてあやしながら食べていた銀の尻尾や耳にちらちら目を遣っていた息吹を見咎めた主さまは、それでも誰よりも沢山丹精込めて作ってくれた息吹の朝餉を食べると、腰を上げる。
「息吹、もう行くぞ。早くしろ」
「ちょ、ちょっと待って、あともうちょっと!」
「なんだ、どこかへ行くのか?」
「地主神を祀っている祠の掃除に行く。お前たちはついてこなくていい」
銀と雪男が身を乗り出したが、先手を打ってそれを封じた主さまは、大急ぎで口に山菜ごはんを詰め込んで立ち上がった息吹と一緒に庭に降りて、井戸の水を汲み上げた。
「地主神か。しっかり崇めないと祟られるからねえ。息吹、よく見つけてきたね。よしどれ、私も行って祝詞でもあげようか」
「いや、いい。お前はさっさと山姫を連れ帰って新婚生活を味わえ」
井戸まで一緒について来た晴明は、主さまがどうしても息吹を独り占めしたがっていることにもちろん気付いていながらも、まるでそれに気付いていない風に腰に手をあてて首を傾げた。
「私も行っては駄目かな?」
「一緒について来てもらいたいけど、私と主さまで綺麗にしてからでもいい?とにかく苔とか生えてて可哀そうだったの。主さまの馬鹿」
「馬鹿とはなんだ、俺も忘れていただけだ。じゃあ晴明、絶対ついて来るなよ」
念を押されて、噴き出してしまいそうになった晴明は背中を向けて肩を揺らしながら了解したと手を軽く挙げて屋敷の方へと戻って行く。
ほっとした主さまが水がたっぷり入った手桶を持ち、息吹がお供え物を手に裏山へ行くと、鬱蒼と生い茂る雑草のせいで薄暗い中、主さまを見上げた。
「明日は裏山をみんなで綺麗にしたいの。昼間でも動ける百鬼たちと一緒にお掃除したいんだけど…」
「今夜話しておく。…俺は雑草を抜いたりなどしないからな。面倒だ」
「じゃあ主さまは寝てていいよ。銀さん手伝ってくれるかなあ。あと雪ちゃんと父様と母様と…」
「…やっぱり俺もやる。早く行くぞ」
…と言いながらもふたりきりを堪能したい主さまの足取りはのろのろ。
「んん、美味い。おっと若葉、お前はまだ食えないぞ」
若葉を膝に乗せてあやしながら食べていた銀の尻尾や耳にちらちら目を遣っていた息吹を見咎めた主さまは、それでも誰よりも沢山丹精込めて作ってくれた息吹の朝餉を食べると、腰を上げる。
「息吹、もう行くぞ。早くしろ」
「ちょ、ちょっと待って、あともうちょっと!」
「なんだ、どこかへ行くのか?」
「地主神を祀っている祠の掃除に行く。お前たちはついてこなくていい」
銀と雪男が身を乗り出したが、先手を打ってそれを封じた主さまは、大急ぎで口に山菜ごはんを詰め込んで立ち上がった息吹と一緒に庭に降りて、井戸の水を汲み上げた。
「地主神か。しっかり崇めないと祟られるからねえ。息吹、よく見つけてきたね。よしどれ、私も行って祝詞でもあげようか」
「いや、いい。お前はさっさと山姫を連れ帰って新婚生活を味わえ」
井戸まで一緒について来た晴明は、主さまがどうしても息吹を独り占めしたがっていることにもちろん気付いていながらも、まるでそれに気付いていない風に腰に手をあてて首を傾げた。
「私も行っては駄目かな?」
「一緒について来てもらいたいけど、私と主さまで綺麗にしてからでもいい?とにかく苔とか生えてて可哀そうだったの。主さまの馬鹿」
「馬鹿とはなんだ、俺も忘れていただけだ。じゃあ晴明、絶対ついて来るなよ」
念を押されて、噴き出してしまいそうになった晴明は背中を向けて肩を揺らしながら了解したと手を軽く挙げて屋敷の方へと戻って行く。
ほっとした主さまが水がたっぷり入った手桶を持ち、息吹がお供え物を手に裏山へ行くと、鬱蒼と生い茂る雑草のせいで薄暗い中、主さまを見上げた。
「明日は裏山をみんなで綺麗にしたいの。昼間でも動ける百鬼たちと一緒にお掃除したいんだけど…」
「今夜話しておく。…俺は雑草を抜いたりなどしないからな。面倒だ」
「じゃあ主さまは寝てていいよ。銀さん手伝ってくれるかなあ。あと雪ちゃんと父様と母様と…」
「…やっぱり俺もやる。早く行くぞ」
…と言いながらもふたりきりを堪能したい主さまの足取りはのろのろ。